眠り姫は夜を彷徨う
『そう。あなた…本宮くんと毎日途中まで一緒に学校に来てるけど、本当は特に待ち合わせとかしているワケじゃないんですってね?たまたま出る時間が一緒になるだけだって本宮くんは言ってたけど、でも本当はただの偶然なんかじゃないんじゃないの?』

『どういう…意味?』

『あなたが敢えてその時間を狙ってるんじゃないの?って言ってるのよ。偶然を装って、本宮くんが優しいのを良いことにそういう現状に甘えてる。そういうとこが何より図々しいって言ってるの』


(痛いとこ突いてくるよなぁ…)


授業を受けながら、先程の磯山さんとの会話を思い出す。

彼女の言葉に私は何も言えなかった。だって私は、本当に圭ちゃんの家を出る時刻に合わせて自分も家を出ていたのだから。

自分的には他の友人達と会うまでの僅かな道のりであっても、その少しの時間ぐらいは圭ちゃんと共有したいなって思っていただけだったのだけど。

いつものように、ただ「おはよう」って挨拶を交わして。

でも、それが圭ちゃんに迷惑掛けていたのかな…?


『そもそも如月さんは本宮くんのこと、どう思ってるの?本宮くんはあなたのこと、ただの幼なじみだって言ってたけど?』

『私は…。私にとっても圭ちゃんは、幼なじみ…だよ』

でも、それだけじゃない。とっても大切で、まるで家族のような存在。


(でも、言えなかった)


『もう小さな子どもじゃないんだからさ、そういうの止めたら?昔からの腐れ縁に付き合わされる本宮くんの身にもなってみなよ。あと、高校生の男の子にその「ちゃん」付けもないって。可哀想だよ』
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