眠り姫は夜を彷徨う
その数十分前…。
塾での学習時間が終わり、帰り支度を済ませた圭はゆっくりと教室を後にした。いつもより僅かに重い足取りで後から来る生徒に次々と抜かれながらも、顔見知りの生徒には挨拶を交わしながら階段を下りてゆく。
特別身体が疲れているという訳ではなかった。だが、このところ頭の中を占めている『気掛かり』があった。
(もう…何日も紅葉と、まともな会話をしていない…)
会話をしていないどころか、ろくに顔すら合わせていない。それは長い付き合いの中で今まで一度もなかったことだった。
あれはいつだったか。数日前、朝いつもの時刻に紅葉が家の前に出ていなかった日があった。
その時は、たまたま何かあって準備が遅れていたりするのかな?くらいにしか考えていなくて。だから、学校で顔を合わせた時に「今日はどうしたの?」なんて聞いてみればいいだなんて気楽に考えていたのだ。
もともと、自分たちは学校へ行くのに時間を決めたり、待ち合わせをしている訳ではない。だから、もしかしたら具合が悪いのかも?との心配はありながらも、敢えて呼び鈴を鳴らすことを躊躇ってしまった。
その時間には、夜勤明けの紅葉の母が既に眠っているということを以前紅葉から聞いていたのもあるし、何より具合が悪い時は必ず紅葉の方から連絡を入れてくれるものと思っていたのだ。今まで、お互いがそうであったように。
学校ではクラスが違うのですぐに会える訳ではなかったが、休み時間に紅葉の姿を見掛けた時は普通に元気そうで安心した。話す機会はなかったが。
でも翌日も、翌々日も。
朝、紅葉に会うことはなかった。
塾での学習時間が終わり、帰り支度を済ませた圭はゆっくりと教室を後にした。いつもより僅かに重い足取りで後から来る生徒に次々と抜かれながらも、顔見知りの生徒には挨拶を交わしながら階段を下りてゆく。
特別身体が疲れているという訳ではなかった。だが、このところ頭の中を占めている『気掛かり』があった。
(もう…何日も紅葉と、まともな会話をしていない…)
会話をしていないどころか、ろくに顔すら合わせていない。それは長い付き合いの中で今まで一度もなかったことだった。
あれはいつだったか。数日前、朝いつもの時刻に紅葉が家の前に出ていなかった日があった。
その時は、たまたま何かあって準備が遅れていたりするのかな?くらいにしか考えていなくて。だから、学校で顔を合わせた時に「今日はどうしたの?」なんて聞いてみればいいだなんて気楽に考えていたのだ。
もともと、自分たちは学校へ行くのに時間を決めたり、待ち合わせをしている訳ではない。だから、もしかしたら具合が悪いのかも?との心配はありながらも、敢えて呼び鈴を鳴らすことを躊躇ってしまった。
その時間には、夜勤明けの紅葉の母が既に眠っているということを以前紅葉から聞いていたのもあるし、何より具合が悪い時は必ず紅葉の方から連絡を入れてくれるものと思っていたのだ。今まで、お互いがそうであったように。
学校ではクラスが違うのですぐに会える訳ではなかったが、休み時間に紅葉の姿を見掛けた時は普通に元気そうで安心した。話す機会はなかったが。
でも翌日も、翌々日も。
朝、紅葉に会うことはなかった。