眠り姫は夜を彷徨う
彼がいったい何者で紅葉とどんな繋がりがあるのかずっと気になっていた為、紅葉に直接聞いてみたことがある。彼女から返って来た二人の出会いのきっかけは意外なものだったけれど。

その後、自分なりに少しだけ彼について調べてみた。

紅葉が言っていたように彼は学校では結構な有名人だった。特に女子の間では…。その凛々しい見た目から学年問わず女子たちに大層な人気で、特に彼と仲が良いという生徒会長とのツーショットが目の保養にもなって、たまらないのだとか何とか。

生徒会長が正統派の格好良さなら彼は少しワルな感じで、それがまたワイルドで恰好良いのだとかクラスの女子が騒いでいた。

(紅葉もやっぱりそう、なんだろうか…)

やはり、他の女子たちと同じように彼のような男に憧れを持ったりするのだろうか。

自分とは全然違うタイプの彼に、少しだけ嫉妬のようなものを感じてしまっていたことは恥ずかしくて紅葉には口が裂けても言えないけれど。


でも、その彼が何故こんな所に…?

それに、よくよく見てみれば、もう一人の人物は噂の生徒会長ではないか。

(何で生徒会長までっ?!もしかして紅葉の顔を見られたのかっ?こんなことが学校にバレたら紅葉は学校を退学になってしまうんじゃ…?)

一気に不安が募ってくる。


そんなことを考えている内に男たちは全て叩きのめされ、地に倒れ伏し、そこには再び静寂が戻って来た。 

足元に転がる者たちの中央で、ただ静かに夜風に吹かれ立ち尽くしている彼女の後ろ姿は、何処か現実から切り離された絵画のようにも見えた。
< 69 / 186 >

この作品をシェア

pagetop