眠り姫は夜を彷徨う
当たり前だ。眠りながらもあんなに暴れていたら疲れなんか取れる筈がない。それが連日ともなれば尚更だ。
こちらに気づくことなく歩き出した紅葉の後を追うように、意を決すると自らも足を踏み出した。
「紅葉っ」
その後ろ姿に声を掛けると。紅葉はビクリ…と身体を震わせて足を止めた。
「けい、ちゃ…」
驚きの眼差しで恐る恐る振り返るその様子に、そんなに警戒されるなんて少しショックだったけれど、努めて普段通り明るく声を掛けた。
「おはよ、紅葉」
「あ…うん。お、はよう…」
やはり、どこかぎこちない。だが、その気まずさに気付かぬふりをして言葉を続けた。さり気なく隣に並ぶと、紅葉も戸惑いながらも横について歩き出した。
「久し振りだね。紅葉とこんな風に歩くの。朝も全然会わなくなっちゃったし、学校でもなかなか話す機会がないし、ね」
「………」
紅葉は俯いたまま黙っている。
「紅葉…。身体の調子は大丈夫?今日あまり顔色が良くないよ。無理とか、してない?」
すると、紅葉は俯いたまま小さく首を横に振った。
「昨夜のこととか…覚えていたり、する?」
「……っ…」
途端に紅葉は再び足を止めた。顔は俯いたままだ。そこから小さな呟きが聞こえてきた。
「ご…め、…なさ…」
「紅葉…?」
「…ごめんなさい。もう、けいちゃ…。迷惑は掛けないようにする、からっ」
まるで今にも泣き出しそうな紅葉の声に僕は慌てた。
「ちょっと待って、紅葉。僕は別に迷惑だとか、そういうことを言ってるんじゃ…」
「…だって!」
途端に僕の言葉を打ち消すように紅葉は声を上げた。
こちらに気づくことなく歩き出した紅葉の後を追うように、意を決すると自らも足を踏み出した。
「紅葉っ」
その後ろ姿に声を掛けると。紅葉はビクリ…と身体を震わせて足を止めた。
「けい、ちゃ…」
驚きの眼差しで恐る恐る振り返るその様子に、そんなに警戒されるなんて少しショックだったけれど、努めて普段通り明るく声を掛けた。
「おはよ、紅葉」
「あ…うん。お、はよう…」
やはり、どこかぎこちない。だが、その気まずさに気付かぬふりをして言葉を続けた。さり気なく隣に並ぶと、紅葉も戸惑いながらも横について歩き出した。
「久し振りだね。紅葉とこんな風に歩くの。朝も全然会わなくなっちゃったし、学校でもなかなか話す機会がないし、ね」
「………」
紅葉は俯いたまま黙っている。
「紅葉…。身体の調子は大丈夫?今日あまり顔色が良くないよ。無理とか、してない?」
すると、紅葉は俯いたまま小さく首を横に振った。
「昨夜のこととか…覚えていたり、する?」
「……っ…」
途端に紅葉は再び足を止めた。顔は俯いたままだ。そこから小さな呟きが聞こえてきた。
「ご…め、…なさ…」
「紅葉…?」
「…ごめんなさい。もう、けいちゃ…。迷惑は掛けないようにする、からっ」
まるで今にも泣き出しそうな紅葉の声に僕は慌てた。
「ちょっと待って、紅葉。僕は別に迷惑だとか、そういうことを言ってるんじゃ…」
「…だって!」
途端に僕の言葉を打ち消すように紅葉は声を上げた。