眠り姫は夜を彷徨う
(夜のことも…。もう、これ以上迷惑なんか掛けたくない…)


先日の夜…。

私は夢うつつだった。

気付いたら目の前には圭ちゃんがいて。「大丈夫?紅葉…」いつもの心配げな優しい瞳がこちらを覗き込んでいた。


すぐには状況が把握出来なかった。

夢を見ていた気がするのに…。何だかとっても温かな夢を。

でも、気付けば周囲は暗くて、冷たい風が吹いていて。夜なんだと気づいた。


…覚えてない。記憶がない。


夜に外に出た記憶なんかない。

当たり前だ。自分は普通に自室のベッドに寝ていた筈なのだから。


そこで、すぐに状況を理解した。

また、やってしまったのだと…。


私は、何故か圭ちゃんの自転車の後ろに座っていて。

知らない内に、また圭ちゃんに迷惑を掛けてしまったのだと瞬時に悟った。

それは、今までにも何度かあったことだった。

私の夢遊病が酷く、町内で噂になってしまったり、やたらと追われることが多くなった時。周囲の噂話によってそれが発覚して、圭ちゃんはそんな私をフォローしようと動いてくれていた。大抵は、私自身の知らないところで…だけれど。

私は眠って行動している時でも、何故か圭ちゃんの声にだけは素直に応じるらしくて。通常は追われれば追われる程、何故か逃げるらしいのだが、圭ちゃんだけは、そんな私の行動を止めることが出来るらしい。

それは自分的には、すごく嬉しいことだと思っていた。圭ちゃんは特別なんだって…。自分で意識していない所でも、それは変わらないのだということが証明出来ているようで。


でも、それは違う。

これは、ただの甘えだ。
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