眠り姫は夜を彷徨う
圭ちゃんは家族でも何でもない。ただ、小さな頃から偶然近くにいた分、そんな状況を嫌でも知ってしまっただけなのだ。

そして、優しい圭ちゃんは、そんな私を放っておけなかっただけ。


…イライラする。

自分の行動。その甘さに。

そして、こんな状況になっても自分が夜な夜な外に出て何をしているのか把握することも出来ず、その理由は勿論のこと、実感さえも湧かないなんて。

(実際、ヤバイ。今更だけど私、かなりヤバイ人だ…)

普通に精神状態を疑うレベルだと思う。本当に今更だけれど。

(でも、もう終わりにしなくちゃ。圭ちゃんの手を煩わせない為にも…)

自分では、どうすることも出来ない無意識下の行動。

でも、それでも…。そこに向き合って自分でどうにか制御していくしか道はないのだ。

もう、子どもではないのだから。自分で自分の行動には責任を持たなくては…。


(でも、どうしたら良いんだろ?どうすれば治るのかな…?)


独り思いを巡らせながら校門を後にすると、前から差し込む西日に思わず足を止めた。

周囲には同じ制服を着た生徒たちが未だちらほらと見え、そんな中、一組のカップルが仲睦まじく腕を組んで歩いている後ろ姿が目に入った。

(圭ちゃんたちも、あんな風に並んで歩いて帰ったのかな…)

仲良さそうに腕を組んでいた二人。

磯山さんは圭ちゃんに『猛アピール』してるって以前タカちゃんが言っていた。そして、今現在付き合ってるってことは、見事に圭ちゃんのハートを射止めたことになる。

(すごいなぁ…)

嬉しそうに笑っていた彼女の姿が頭を過ぎる。

知らず目が潤んできて、紅葉は右手の甲で目頭を押さえた。


「西日が眩しい、な…」

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