【完】ファーストキス、投げ出して。

パタパタ……、足音が聞こえる。
それで、再会に浸っていたものが現実に引き戻される。
今、授業中なんだった。



「巻き込んで悪かった。」



「いや、大丈夫。」



「……。」



「……。」



「えっと、いまさらだけど。」



「……。」



「俺、北川五十鈴。」



「花町叶桜。いまさらだけど。」



ぎこちなくかわす自己紹介。
一応握手もしたけど。


あの時より大きくて、角張ってて。
“男の人”だ。


触れると胸がきゅってなって、全身が痛くて。
むずがゆい。……恥ずかしくなる。


2年越しの自己紹介。
やっと、君の名前を知った。
キタガワイスズ、もう忘れないよ。



「……じゃあ。」



「じゃあ。」



教室は4階、移動先は2階。
途中まで一緒に降りて、3階。
そこから一段一段、ゆっくり降りる。
君のあがる音に合わせて。

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