【完】ファーストキス、投げ出して。
「気持ちわかる。」



そう呟いた彼は。
どこか遠く、ここではないどこかを見つめていた。


そっか、この人振られたばっかりなんだ。
私は一か月前だけど。
私の一か月前味わった思いを、今はこの人が感じてるんだ。
この人は、私と一緒なんだ。



「……辛いよね。」



「かなり。」



「胸の所、穴あくよね。」



「ブラックホール並みにな。」



「……頑張ったね。」



「……。」



「勇気、出したんだね。」



「……っ。」



「お疲れ様。」



「……あんたいて、良かった。」



「失恋のセンパイだから。」



「なんだそれ。」



そういった彼の顔は、泣き笑いだった。
この言葉全部、私が自分に言ってあげたかった言葉。
少しでも、支えになればいい。
そう思って、自分に伝えられなかった言葉を。
彼に託した。


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