【完】ファーストキス、投げ出して。
「私、センパイと修学旅行まわりたかったな。」



「俺も。あいつとまわりたかった。」



「神社めぐりして、恋みくじ引いて。
 私が小吉で、センパイが大吉。
 ふたりの見比べっこして。
 わあわあ言い合いながら抹茶ソフト食べて。
 ほっぺについてるってセンパイが取ってくれて。
 それをペロッて食べてくれるの。」



「やけに具体的だな。」



「一年妄想してきたからね。」



「……だな。」



叶いもしない願いを。
ふたりで延々言い合って。
せめて自分の中だけでは幸せでいられるように。
理想のセンパイ彼氏のピースを埋めていく。



「それでね、ファーストキスはセンパイに捧げるの。」



「へえ、まだしたことないんだ。」



「とっといてあったの。」



「どんなふう?」



「じっとふたり見つめ合って。
 そっとセンパイの手が頬に触れるの。
 徐々に距離縮まって。
 鼻と鼻がぶつかりそうになるくらい近づいたとき。
 センパイはふと微笑んで、目を閉じて、唇が重なるの。」




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