【完】ファーストキス、投げ出して。
「……女ってロマンチストすぎるな。」



「夢みたいの。」



大事にとっておいてきたファーストキス。
センパイに捧げたい。


そう思ってきた。でも。
捧げたい人はもう。
手の届かない所にいる。
もう、触れられない人。


……センパイ。



「もう、どうでもいいけど。」



センパイにもらってもらえないなら意味ない。
もう、いらない。


目を閉じれば鮮明にセンパイの顔が浮かんで。
ふはって笑った時の目尻が可愛くて。
……忘れられない。


好きです、センパイ。
大好きです。今でも。



「……ふたり、見つめ合って。」



「……は?」



突然の言葉にびっくりして思わず目を合わせる。



「頬に手を当てる。」



彼の手がそっと私の頬にそえられる。
それだけで今から何が起こるのか理解するには十分だった。


サイゲン。


私の理想の再現。
彼の顔がゆっくり近づいてくる。



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