一つだけ願いが叶うなら
ペンギンショーのあと、ちょうどお昼時だったので昼食をとることにした。
場所は大水槽が見えるカフェテリア。私はオムライスを頼んで、歩はハンバーグランチを頼んだ。
「あれってジンベエザメ?」
「かもね」
料理を待っている間そんなくだらない話をしていると、いつの間にか歩が真面目な顔をしてこちらを見ていた。
「あのさ・・・」
「どうしたの?」
「6月14日空いてる?」
「そんな先の予定なんて分かんないよ〜」
1ヶ月以上もあとのことなんてまだ何も決めてない。
どうしてそんな何でもない日をわざわざ選んだのだろう。
「そっか〜そうだよな〜」
「何かあったの?」
「いや、遊園地行けないかな〜と思って」
「えっ!行きたい!」
私遊園地が大好きなんだよね〜!
「まじで!?まぁ、予定空いてるかどうかまた確認しておいて」
「うん!」
6月14日。覚えておこう。・・・ん?6月14日・・・?
『来月14日で息子の和樹が息を引き取ってから2年ーー』
まさか。
私を法事に行かせたくなくてそんな予定を入れたの??
私は歩の顔をじっと見つめる。
「ん?どしたー?」
歩は笑った。
ーーどうしてその日なの?
聞きたいけど、聞けない。頭では文が組み立てられてるのに、口から言葉が出てこない。
「ううん、なんでもない」
慌てて笑顔を貼り付ける。
どうしよう。どちらへ行こう。
私は料理が届いてもあまり明るい気分にはなれなかった。
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