雨の日に傘をさして、きみにアイにくる。
「昔、いろいろあって、自分の名前が好きじゃないんだ。
だから、名前は教えたくないかな。」
「そ、っか。」
昔にいろいろあったのなら、あまり深入りするのは、よくないよね。
思い出したくもないことのひとつやふたつ、あるだろうしね。
「じゃあ、いつか雨男くんの名前を教えてね」
いつか彼の本当の名前を呼べたらいいと、思う。
次からは、雨男くんが答えられる質問をしよう。
「じゃあ、今日は僕、帰るね」
「うん、ばいばい」
「また、雨の日に。」
そう言って彼は、小窓から姿を消した――。