伊東さんの運命の相手はクズでした。





そんな彼はそれはそれは自分と同じくお顔がよろしかった。



退院する事はめでたいことにも関わらずクロくんの顔が拝めなくなるのが嫌だとギャン泣きする人は大量発生。



彼が貧血で倒れれば看護師総出で彼の元に押しかけ私の血を使ってとてんやわんや。



仕事が忙しく髪が伸びても切りに行く時間が無くて纏めていた時なんてお年寄り達に何度女に間違われたことか。


嫌気がさして週末明けにはその黒髪は綺麗さっぱり短くなっていたのも記憶に新しい。




そんな老若男女、見る人を魅了させる彼は部下であった。



なんだかんだクズな彼も部下を可愛がるのである。



「あの、先生が担当している伊東さんって」

「あぁ、彼?凄いよねー、あれ普通なら死んでるよ。凄まじい生命力。怪我は凄いけど命に別状は無さそうだよ」



今朝運び込まれた患者を見たときは流石に彼もヒヤリとした。


1番最初に駆け付けて来た恋人らしき人が泣いてたのにも関わらず
「そんなに泣くとその顔のアート作品崩れますよ」
と聞いたときは成る程こいつは死なないなと横で静かに悟った。



「・・・そうですか」




言葉だけじゃ素っ気なさそうに聞こえるがその顔は珍しく安堵の表情。



へー、そんな顔出来たんだ。
大抵子供とお年寄り以外ニコリともしないのにね。
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