【完】それでもいいと思える恋だった。
「……っ。」
やだ、いやだ。
いやだよ、捺くん。
離れたくないよ。ずっと一緒にいたいよ。
隣で、捺くんをずっと見ていたい。
誰にも、渡したくない。
離れる実感が、やっと湧いてきた。
今までどこか夢心地で。
きっと何かの間違いだって目を逸らしてきた。
違うんだ。
私と捺くん、離ればなれになるんだ。
我慢していた涙がぽろぽろこぼれていく。
雨粒みたいに大きな涙が地面に落ちていく。
「香織?」
いきなり泣きだした私に慌てだす捺くん。
ごめんなさい。
すぐ、泣きやむから。
ごめんなさい。
ちゃんと、伝えるから。
……離れたくない。
「泣くなよ、香織。」
ぽんぽん、頭を撫でてくれる。
手が温かくて、大きくて。
触れられなくなる。
もう、なでてもらえなくなるかもしれない。