【完】それでもいいと思える恋だった。

「……っ。」



やだ、いやだ。
いやだよ、捺くん。


離れたくないよ。ずっと一緒にいたいよ。
隣で、捺くんをずっと見ていたい。


誰にも、渡したくない。


離れる実感が、やっと湧いてきた。
今までどこか夢心地で。
きっと何かの間違いだって目を逸らしてきた。


違うんだ。
私と捺くん、離ればなれになるんだ。


我慢していた涙がぽろぽろこぼれていく。
雨粒みたいに大きな涙が地面に落ちていく。



「香織?」



いきなり泣きだした私に慌てだす捺くん。
ごめんなさい。
すぐ、泣きやむから。
ごめんなさい。
ちゃんと、伝えるから。


……離れたくない。



「泣くなよ、香織。」



ぽんぽん、頭を撫でてくれる。
手が温かくて、大きくて。
触れられなくなる。
もう、なでてもらえなくなるかもしれない。


< 14 / 42 >

この作品をシェア

pagetop