【完】それでもいいと思える恋だった。
それが分かったから。
香織は、言わなかったのだろうか。



「香織から伝言。
 “ふたりの秘密の場所で待ってます”だって。」



「……。」



「私にはわからないけど、捺には分かるんでしょ?
 ……行ってあげなよ。」



「俺、帰るわ。」



「香織傷つけたら許さないから。」



乱雑にリュックを担いで。
俺は足早に学校を去った。


ふたり、秘密の場所。
幼いころ決めた、秘密基地。
窓から見える星空は綺麗で。
それを見つめる香織の瞳に。
ホログラムのように星の光が映っていた。


綺麗だと思った。


長い髪はくるりとしていて、細くて。
横顔はあどけなくて。
小さな体に、大きなランドセル。
体育座りをして、手は胸の前でぎゅっと握られていて。
目は、宇宙みたいにキラキラで。


幼いながらも、恋をした。
守りたいと、思った。



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