【完】それでもいいと思える恋だった。
儚くて、力を入れれば折れそうで。
不確かなもの。
無垢で、穢れを知らないこの子を。
守りたいと、そう思った。
『なつくん!』
なんだよ、ばか。
『待ってください!』
いつも後ろ歩いてくる癖に。
俺が早く歩けば、追いかけて来てくれるだろ。
『ふたりの秘密ですね。』
そんな嬉しそうに言うな。
勘違いしてしまうから。
『捺くん。』
その顔、誰にも見せるなよ。
笑った顔、俺だけにしか見せるな。
「好きだ、ばーか。」
だから、離れていくな。
俺を置いていくな。
香織。