【完】それでもいいと思える恋だった。
「実は父さんの仕事の都合で、引っ越すことになった。」



予想もしていない言葉に頭が真っ白になる。
引っ越し。
引っ越しって。



「えっと……。」



頭がついていかない。
引っ越して、どこにだろう。
近所かな。



「県外に引っ越すことになるんだ。
 電車で3時間かかる所になる。」



電車で3時間?
えっと、私。どこ行くんだっけ。
ここからいなくなるの?



「私、高校はどうなるんですか?」



「あっちの高校、受けてもらうことになる。
 いきなりの事で申し訳ないと思ってる。」



いきなり、すぎるよ。
私今日、捺くんと一緒な高校行こうって。
朝寝坊だめですよって、言って。


……捺くんは?
私引っ越したら、捺くんに会えなくなる?
捺くんと、離ればなれ?



「い、いつですか。」



「……2週間後、住むところももう決まってる。」



2週間。
いきなり告げられたあまりにも短い時間に。
泣く事も、反抗する事も。
なにもすることができなかった。


その後、自分がどうやって部屋に戻ったのか。
何にも覚えていない。


ただ、捺くんと一緒にいられなくなることが。
約束、守れなくなることが。
それだけが、心を締め付けた。




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