【完】最期のラブレター
もう何年も前に見せたうしろ姿を。
好きだと言ってくれた。
私にとって何気ない出来事を。
あなたは、死ぬまで特別だと言ってくれた。


手すりの所まで歩いてくる。
身を乗り出して下を見れば。
足がすくみそうなほどの高さがあって。
ここを飛び降りたのかと想像すると。
怖くて身震いした。


亮くんが最後に見た景色はどんなだっただろうか。
綺麗な星空だっただろうか。


今、空を見上げれば。
夜に染まりかけた濃紺と淡いオレンジのグラデーションで。
一番星が顔を出していた。


泣いているような、笑っているような。
そんな、空模様。


ああ、あなたが最後に見た景色が。
こんな景色なら良いのに。


そしたらきっと、亡くなったあなたも。
少しは報われるだろうに。



「もっと、早く告白しなさいよ。」



あなたが私のうしろ姿が好きだと言うのなら。
私はあなたの守られている姿が好きだった。


私を頼ってくれて、必要としてくれて。
笑いかけてくれる。
そんなあなたが、私も。好きだった。



「私だって、好きだったわよばか」



< 18 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop