この暴君、恋すると手に負えません



私がここで降りたのは、何も二人の気を利かせただけではない。もうひとつ目的があったのだ。

私の中でどうしても消化しきれていない問題。


ーーそれは意図的に切断されたスポットライトのことだ。


私は特設ステージの裏側に足を踏み入れ、照明を近くで観察しようと階段を上った。歩く度に、カンカン、と冷たい鉄筋の音が鳴り響く。


「......ここか」


私はステージの真ん中の位置に切断されたままのコードをみつけた。やはり、近くで見ても誰かが意図的に鋭いナイフで切った痕跡がある。

桐生さんはあの時、確かにナイフを所持していた。

だけど冷静に考えると、照明が落下してから桐生さんが私たちの元へかけつけるまで一分もかかっていなかったのだ。


ーーそう、つまり照明を切り落としたのは桐生さんではない。


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