この暴君、恋すると手に負えません
「これは私が朱鳳家の執事になった日に帝様から頂いたとても大切な物。だから私にとってはそんなものではないんです」
桐生さんはそのままピアスを再び付け直した。上品さのあるブルーサファイアの輝きは、桐生さんのイメージ通りでとても似合っていた。
「だからってこんな真夜中に探さなくてもいいだろうが」
「......すみません、どうしても見つけたかったんです」
「まぁいい。お前がここにいた理由は分かったからな」
すると暴君は桐生さんの頭をぽんと軽く撫で回した。その様子をみると、少しだけ心の中が騒ついた気がした。
ーー何だろう。
ちょっとだけモヤモヤする。
その時の桐生さんは、まるで恋する乙女のように恥じらいつつも、とても可愛いらしい笑顔を浮かべていた。