この暴君、恋すると手に負えません


まだあの甘い口づけの余韻に浸っているにも関わらず、スイートルームに入るなり、暴君は私の腰に手を回し抱き寄せた。

そして暴君は私を求めるように唇を押し当てた。片手で私の横髪を耳にかけると唇は耳へと移り、暴君はわざとらしく耳元で音を立ててキスする。


「......お前、耳弱いだろ?」
「......っ、違い、ま......っ」


とどめに暴君の甘い声で囁かれると、思わず体はびくりと震えてしまう。その様子を見た暴君は確信をついたかのように私の耳を弄ぶような口づけをしていた。


ーーこのままでは本当に暴君の思うがまま、自分の心も体も奪われてしまいそう。

私は無駄な抵抗だと知りつつ、力無く暴君の胸板を押した。しかしその手さえも捕まれ、そのまま手の甲に口づけを落とされるのだった。


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