この暴君、恋すると手に負えません
私は今、誘拐犯に誘拐された子どものような気持ちだった。
これから自分がどうなるのか、自分が何をされるのか、不安で仕方なかった。
隣で偉そうに足を組んで座っている暴君と目が合うと、不敵な笑みを浮かべこう言う。
「そんなに怯えんなよ。別に手ぇ出したりしねぇから」
ーーいやいや、さっきキスしてきたの誰よ!?
やっぱり頭の打ち所が悪かったのだろう。
でなければこの状況は納得がいかない。
普通の常識人ならば、こんな事態になる筈がないのだから。