この暴君、恋すると手に負えません



そして暴君はきっとまた私に横暴な命令をしてくると思った。
それはいつも意地悪な命令をする時に口角を吊り上げるからだ。


「でもその前に俺の命令を聞いてもらおうか?」


私はまた暴君の思い通りになってたまるかと思い、今度は自ら暴君の胸倉を掴んで唇を押し当てる。


一瞬だけ触れるだけどキスをして、そのまま暴君を睨みつける。
すると暴君は驚いたように目を丸くして私を見つめていた。


そして次の瞬間、突然私の体は宙に浮かぶ。

目の前に映った景色は全て暴君のあの美しい瞳に奪われる。
私は気づいたらそのまま暴君に抱き上げられ、キスをされていたのだ。



この人は何でこんなに私にキスをするのだろう。
私は恋人でもなんでもない、ただの契約で結ばれただけど護衛に過ぎないのに。



こんな恋人同士がするようなこと、契約書には何も書いていなかったのに。



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