この暴君、恋すると手に負えません
「帝様、お怪我はございませんか?」
一緒に乗っていた医者が暴君に問い掛ける。
「虹美、どこか痛まないか?」
「いや、貴方に聞いてらっしゃるのに何で私が答えるんですか?」
「俺は平気だからお前に聞いてんだよ。って、ここ血が滲んでんじゃねぇか」
すると暴君は私の手の切り傷に気づき、眉間に深く皺を寄せた。
「おい、消毒と絆創膏よこせ」
暴君が命令すると、医者は即座に手渡した。そしてコットンに消毒液を染み込ませ、そっと私の傷跡に押し当てた。
「......いっ」
「大丈夫か?」
私は傷口が染みて痛みを感じたが、素直に首を縦に動かした。すると意外にも手際よく絆創膏を貼り付けて、暴君は私の頭をくしゃりと撫で回した。