この暴君、恋すると手に負えません


「......やっぱり光希さんだったんですね」

すると光希さんはそのまま階段を降り、私の目の前までゆっくり歩み寄った。

「その様子だと気づいてたの?」
「確信はありませんでしだけど」
「でもさっき僕と会った時は気づいてなさそうだったけど?」

光希さんは目を細めて笑みを浮かべていたが、目は笑っていない。何かを企んでいるような雰囲気を察し、私は思わず後退りしてしまう。


「......あの後、会場の不自然に切断された照明を確認してたんです。桐生さんは古びていて擦れて落下したって言ってましたが、誰が見てもナイフのような鋭利なもので切られた痕跡が残ってました」
「それで?」
「あの時、照明が落下してすぐに桐生さんは私たちのもとに駆けつけました。でもただでさえ足元を踏み外したら危険な場所で、暗くなって視界がさらに悪くなっているのに、あの短時間で桐生さんが私たちのところに来るなんてよく考えたらありえないんですよ。だから私はその時に思いました」
「......何を?」
「桐生さんはXではないということ。それに桐生さんはXを庇って嘘をついているということに」


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