この暴君、恋すると手に負えません
「......これはどういうことだ?説明しろ」
暴君は光希さんの胸倉を掴み、眉間に深く皺を寄せながら睨みつける。すると光希さんは降参したと言わんばかりに両手を挙げた。
「......これはもうゲームオーバーみたいだね」
「どういう意味だ?」
「あのね実は――……「帝様」
光希さんの言葉を遮るように、屋上の扉の影に隠れていた人物が歩み寄った。
月明かりに照らされながら、姿を現したのは桐生さんだった。
「帝様、私が説明致しますのでどうかその手を離して頂けませんか?」
「……桐生まで。何なんだお前らは?」
暴君は光希さんの胸倉を離すと、怪訝な表情を浮かべて腕組みしていた。光希さんはその横でほっとしたように胸を撫で下ろす。
私はただその光景を呆然と見つめているしかできないでいた。