この暴君、恋すると手に負えません


「……誉が差向けたのか?」


――その名の呼んだ瞬間、一気に空気が一変した。

とても張り詰め誰もが口を開けることを許されない空気になった。
暴君はそれから口を閉ざすが、漂う雰囲気から圧すらも感じる。


初めて見る暴君の本気で怒りを感じる姿に私も息を呑む。


「おい、何の為に誉はこんなことを仕向けた?答えろ、桐生」


桐生さんは恐る恐る暴君の顔色を伺いながら口を開く。

「帝様の意思で選んだ婚約者が似つかわしくないと判断した誉様が、”あの契約”を破綻させようとシナリオを書き私に二人を引き離すよう命じられました。そして不本意ながら今宵実行致しました」

そして光希さんは桐生さんを庇うように呟く。

「しかも誉社長は、円華にその命令に背いたら朱鳳家の執事を解雇すると脅してたみたいだよ」
「光希様!それは言わないでくださいとお願いした筈です……っ」

桐生さんは光希さんの腕を掴み、はっとした顔で声を荒げた。


――それにしても皆が口にする誉って一体誰なの……?


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