この暴君、恋すると手に負えません


そして、ずっと傍観していた私も恐る恐る口を開いた。


「あの、帝さん?」
「何だ?」
「誉、さんってどなたですか?」
「誉は俺の親父だ。朱鳳財閥を指揮する皇帝みたいな男だ」


――この暴君が”皇帝”と口にしてしまうほどの人物。
目の前にいる威張り散らした王様よりも、凄い人物がいるのだと思うとぞっとしてしまう。


「用は俺と虹美の婚約を阻止しようとしてたってことだろ?誉が考えそうな事だな」


すると暴君は意味深に口角を吊り上げた。
これは何かよからぬ事を思いついた合図だ。


「……上等だ」


そして暴君は何処かに向かって歩き出した。ふと立ち止まると屋上の扉付近で何かを探しているようだ。
目的のものを見つけたのか、暴君は何処か勝ち誇ったように高笑いし始めたのだった。



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