この暴君、恋すると手に負えません


「彼は誉様が直々に選んだ朱鳳家の新たな執事だ。今日から二週間、私が教育係として指導する事になったんだ」

この人、いつの間に来たんだろう。

「ということだから、よろしくな虹美」

瑛斗は昔から変わらない人懐こい笑みを浮かべて私の肩をぽんと叩いた。

「あの今日書庫整理するって仰ってませんでしたか?」
「悪いな。この男が本来明日から来る予定だったが、勘違いして今日急に来たものだから帝様の命令で急遽客室の用意をしていた」
「いやぁ、ずっとアメリカにいたから時差ボケしちゃっててすみません」
「朱鳳家の執事になったからには、そのような粗相は一度しか許さないからな」
「はぁい、すみません」
「......全く」

桐生さんは小さな溜息を吐き出しながら呆れたように頭を抱えていた。そんな二人のやりとりが可笑しく、笑い堪えるように私は口元を手で覆う。


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