この暴君、恋すると手に負えません


すると桐生さんの携帯が突然鳴り響く。どうやら相手は暴君らしく、時折電話越しに暴君の声が聞こえると頰が熱くなるのを感じた。

「......美作虹美、悪いが私は別件で用を頼まれてしまった。片したらすぐ書庫に向かう。それまでこの男に書庫整理を手伝わせてやってくれ」
「えっ、あぁ、はい」
「頼んだぞ」

そして桐生さんは足早に姿を消してしまった。部屋に残された私と瑛斗は互いに目を合わせるなり小さく笑った。

「じゃそういう事でよろしくな?虹美」
「言っとくけどそのへんの書庫よりも広いからねこの家の書庫は」
「はぁい、覚悟しときまーす」

なんて冗談気に答える瑛斗だったが、書庫に入るなり人が変わったようにきりっとした顔つきになった。

段ボールに詰められた本を分類して分別して棚に並べるといった作業だが、瑛斗は初めて書庫に入ったと思えぬほど的確に素早く本を分類していた。


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