この暴君、恋すると手に負えません


「......帝さんはどうしてここに?」
「お前のことが心配だったんだろ。目が覚ますまでは離れないの一点張りだったからな」
「そう、だったんですね」
「帝様が目覚めたら礼を言えよ。それと余計なお節介かもしれないが伝えておく」
「何ですか?」
「桜庭瑛斗もお前を心配していたぞ」
「......瑛斗が?」
「あいつは自分を責めていたからな、後で顔くらい見せてやれ」

なんか今日の桐生さんいつもより少し優しい気がする。

「ありがとうございます、桐生さん」
「......別に。美作虹美に礼を言われるほどのことは言ってない」

桐生さんは少し照れくさそうに呟き、そのまま背を向けて部屋から出て行った。ちょうどその扉が閉まる音で暴君が目覚めたようで、唸り声を洩らしている。


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