この暴君、恋すると手に負えません
「......"あの日"のお前、可愛かったぞ?」
その言葉で私はホテルでの一件を思い出してしまい、恥ずかしさで目尻に涙が滲む。するとその涙を舐めとった暴君は、そのまま頰、首筋へと唇を滑らせる。
ーーあ、朝から盛ってんじゃないわよこの暴君!!
私は力づくで暴君を押し退けようとした時だった。突然、ノックもせずに誰かが部屋に突入してきたのだ。
「虹美!?さっき桐生さんから目覚ましたって聞いたんだけど……って何してるんですか帝様!?」
「......ハチめ、いいとこ邪魔しやがって」
暴君は不服そうに小声でぼやき、私から渋々離れていった。
「俺は先に朝食をとらせてもらう、後でな」
「あ、はい」
そして暴君はそのまま何事もなかったかように部屋を後にした。だが扉が閉まった後も、瑛斗は顔を真っ赤にしたまま硬直している。