この暴君、恋すると手に負えません



「雇用期間は雇用主の護衛に専念し、雇用期間終了時、汝を雇用主の婚約者として迎え入れるって、何ですか!?」
「仕方ねぇな、説明してやる。
お前は今日から半年間、俺の側近という名のボディーガードとして働いてもらう。さっきみたく、俺が危ない目に遭いそうな時に守ってくれればそれでいい。俺も仕事柄、多少は危ない目に遭わざる得ないからな」
「それなら私じゃなくてもっとちゃんとした人を雇ってください!!.......っ、私、帰りますから!!」


私は契約書をテーブルにどんと押し付けると、暴君を睨みつけてから背を向けた。

そして扉を開けて部屋から出ようとした瞬間、背後からばんっと扉を閉めるように暴君の腕が邪魔をした。


「簡単に逃げられると思うなよ」


暴君は背後から私の耳元で意地悪に囁く。その甘い響きに私は体を震わせ、不覚にもどきっとしてしまった。それを無視して再び扉を開けようとすると、もう片方の腕で阻止されてしまった。


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