この暴君、恋すると手に負えません


「俺は必ずお前と結婚する。分かったな?」

ーーその言葉は私の心に響き渡った。

だからだろうか。
私の瞳は一気に熱くなってしまったんだ。

私は否定も肯定もできずに泣いてしまったのだ。

すると暴君は悪戯な笑みを浮かべて立ち上がった。

「......ここなら泣いてるとこ見えませんが?」

そんな悪態を吐く暴君もいつもならむかついて仕方ないのに、今日の私はおかしい。だって気づいたらまたあの男の胸の中で泣いていたのだから。

私が勢いよく暴君に縋り付くように首に腕を回すと、二枚のピンクの花びらが舞い、二人の足元にハートのような形で落ちていく。

「感動して声も出ないか?」

うるさい。
こんな時くらい黙ってなさいよ。


ーーそしてこの時に気づいてしまったんだ。


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