この暴君、恋すると手に負えません
「か、帰してください.......っ」
「だめだ、お前は俺の傍にいるんだ。これは命令だ」
そしてこの暴君はまたあの甘い囁きで私の動きを鈍らせる。その隙を狙っていたかのように、暴君は私の腕を引き寄せた。
ふと目が合った時、あの妖艶な瞳に私は囚われてしまう。そして次の瞬間、私を扉に押し付け暴君は真っ直ぐに見つめながら呟く。
「お前、この俺に手をあげたの忘れたとは言わせねぇぞ?本当ならば警察にでも突き出すところを俺の側近になることでおさめてやるんだから有り難く思え」
ーーそうだった。
私とした事があまりにも非現実な事ばかりに動揺して、この男の頰を思いっきり引っ叩いてしまったのを忘れていた。
この時、蛇に睨まれたカエルのように私は凍りついてしまう。今の私に拒否権なんてなかったんだ。