この暴君、恋すると手に負えません



『光希がくるまで桐生を捕まえておけ』


「最初あのメッセージが来た時、何があったんだろうって思いましたけど」
「悪いな、お前は演技が下手そうだから詳細を話さないほうがいいと思ってな」
「……まぁ、苦手ですけどそういうの」

私はそのまま扉に凭れて話していると、帝さんは意味深な笑みを浮かべて両手を広げた。


「虹美、ここに来い」
「……な、何でですかっ」
「命令だ、早く来ないとどうなっても知らないぞ?」

――出た。暴君発言。
例え契約でも命令ってつけたらなんでも従わなきゃいけないの!?

「そうやって権力振り翳すとこ直した方がいいと思いますけど」
「お前、なかなか言うようになったじゃねぇか」
「誰だって帝さんと毎日一緒にいれば嫌でもこうなりますから」
「はは、嫌でもなるのか?」

私が悪態を吐いていても帝さんは怒りもせずに笑っていた。

さっきの桐生さんとは正反対に私の口は可愛くない言葉しか出てこない。
もっと素直になれたらいいのにな、なんてぼんやり考えていると気づいたら目の前に帝さんが歩み寄っていたのだ。





< 233 / 409 >

この作品をシェア

pagetop