この暴君、恋すると手に負えません
そして帝さんは指輪を目の前に翳しながら、私に優しい微笑みを浮かべた。
とても甘く心地のよいあの低い声でこう呟いたのだ。
「やっぱりいつ見ても綺麗だな」
私はその一言で体中が熱くなるのを感じた。
このまま溶けてしまいそうなほど、呼吸が少し苦しくなるほど、気持ちが昂ぶっていった。
「……指輪がな?」
「わ、分かってますから!」
しかし、この人の心を弄ぶような発言を聞くとやはり素直になれない。
私はむくれた顔をして顔を逸らしていると、帝さんは可笑しそうに笑った。
「拗ねんなよ、かわいいな」
「……別に拗ねてません」
そんな可愛げのない私の頬に帝さんは口付けを落とした。
耳元で”虹美”と優しく囁くように私の名を呼ぶ。
――あぁ、本当にこの人はずるい。
そんな優しく名前を呼ばれたら振り向かずにはいられない。
私は観念したかのように、少しずつ寄せられる帝さんの唇を待つように目を瞑った。
唇が触れそうになると息を止めた。だがその瞬間、驚くべき出来事が起こったのだった――……。