この暴君、恋すると手に負えません
「侮辱した覚えはないが?」
「......っ、よくこんなの食えるなって言ってたじゃないですか!?」
私は思わずまた感情的になり、暴君の胸倉を掴み上げた。
すると暴君は一瞬驚いたように目を丸くしたが、すぐあの余裕に満ちた笑みを浮かべ、胸倉を掴む私の手を包み込むように握った。
「......お前、何か勘違いしてねぇか?」
「な、何をよ!?」
「あの時食べた卵焼きは美味かった。ただ、俺の口には甘すぎたから素直にそう言っただけだ」
「......え?」
「まぁ伝え方が悪かったなら謝る。だからこんな手荒な事はやめろ、女なんだから」
私はそのまま自然と胸倉を掴む手の力を緩めると、呆然とした顔をして目の前にいる暴君を見つめたのだ。