この暴君、恋すると手に負えません
「……帝、お前は頑固者だからな。一度決めたら俺の言う事すら耳を貸さなくなる。だから口で言っても無駄なら、無理矢理にでもあぁするしかなかったんだ」
「生憎、俺は虹美を手放すつもりは一切ない。必ず虹美と結婚するって決めてんだよ」
誉さんは何処か呆れたように深い溜息を吐き出した。
そして帝さんの顎を持ち上げ顔を寄せながら冷たく言い放った。
「お前の身勝手で朱鳳家の名を汚すことはこの俺が許さない」
すると帝さんは誉さんの手を乱暴に振り掃った。
「虹美のことだけは絶対何があっても誉の思い通りにさせねぇ」
誉さんはその言葉を耳にした途端、可笑しそうに笑い声を洩らした。
「そうもいってられるのも時間の問題だ、好きなだけほざけ」
「……どういう意味だ?誉」
「明日になれば分かる。今宵は思う存分、二人の甘い時間を過ごすといい」
「あっ、おい!誉!」
誉さんは意味深な言葉を言い残して、再びベランダへと足を運んだ。
私たちが駆けつけた時にはその姿は忽然と消えていたのだ。