この暴君、恋すると手に負えません
「誉様、お帰りなさいませ」
「……なんだ利用する価値もない犬か。有能な執事と聞いて雇っても、どいつもこいつも使えない役立たずばかりだな」
「もっ、申し訳ございません!」
皇帝、朱鳳誉はやはり何かを企んでいるように笑みを浮かべる。
その目の前で瑛斗は頭を下げつつ苦悶の表情を浮かべていた。
「……まぁいい。この俺が直々に動いてやる」
「何をするおつもりなんですか?誉様」
「安心しろ、手荒な真似はしない。まぁ、あいつ次第だがな?……ふふっ、はははははは!!」
その高らかな笑い声は私たちの耳には届かなかった。
それよりも私は現在、とても困っていた。
――ど、どうしよう。成り行きで帝さんの部屋に来たけど逃げ場がないじゃない!!
帝さんがシャワーを浴びている間、私はひとり大人しくベッドの中で硬直していた。
”いいか?今日は本当に大人しくしてろよ?ここから一歩も動くな”
釘を刺しに刺された私はそのまま動かないでいたのだった。
しかし当然ながら帝さんの香りに包まれていて緊張してしまう。