この暴君、恋すると手に負えません
誉さんの部屋から出た私は、重たい足取りで帝さんの部屋へ向かった。
だが角を曲がった時に、腕組みしながら壁にもたれ掛かっている帝さんの姿があったのだ。
あの話を聞いた後で私はどんな顔をして接すればいいのかが分からず、反射的に視線を逸らしてしまう。
すると帝さんは心配そうな声で尋ねた。
「......虹美、大丈夫か?」
その声に反応して顔を上げると、声以上にとても不安げな表情を浮かべている誉さんがいて、胸がきゅっと締め付けられる。
「……いえ、大丈夫じゃないです」
ーー何せ私はあの皇帝の頰までも思いっきり引っ叩いてしまったのだから。
すると帝さんは目を大きく見開き、私の両肩に手を添えて動揺を露わにするように声を荒げた。