この暴君、恋すると手に負えません
客人を迎える為に、リビングへと皆は召集された。
相変わらず皇帝と暴君は火花を散らしているように鋭い目つきで互いを睨み合っていた。
互いに口を開かず次第にその沈黙に使用人たちが耐えられなくなった頃、客人の車と思われる白いリムジンが門前に停車するのが窓の外から見えた。
そして間も無く、リビングで待つ私たちのもとに見覚えのあるおじいさんが、この雰囲気を中和するかのようにほのぼのとするような笑みを浮かべて姿を現したのだ。
ーーあの人は確か、以前親睦パーティーで見た気がする。名前は思い出せないけど、この全体的にぽってりとしたおじいさんの顔は覚えてる。
「誉くん待たせたかな?遅くなってすまないね」
「いえ、わざわざ朝早くからお越し頂いてこちらこそ申し訳ない」
誉さんは今までと一変したかのように、とても人の良い笑みを浮かべておじいさんと握手を交わしていた。