この暴君、恋すると手に負えません
#2 おばあちゃんの卵焼き
そして契約書にサインをした私は、この瞬間、朱鳳帝の側近という名のボディーガードになったのだった。
「よし、じゃまずはその汚れた作業着をどうにかしねぇとな」
「はい?」
「ほら、行くぞ」
暴君はそのまま私の腕を掴むと部屋を飛び出し、再び何処かへ私を連れて行こうとした。
もうどうにでもなれと思いながら、私は大人しく暴君に導かれるまま歩いていた。
すると私たちの背後から小刻みな息遣いが徐々に近づいてきた。そして振り返った瞬間、私はその主に押し倒されてしまう。
「ワン!」
「......犬?」
とても毛並みが美しい大柄なゴールデンレトリバーが私の目の前で尻尾を振り回している。すると暴君はくすくす笑いながら犬の頭を撫で回した。