この暴君、恋すると手に負えません


『挙式は彼の誕生日にしようと思ってて、12月25日に挙げる予定なんです』


ーーあれから縁談が上手く行ったのだろう。


『その日は確か朱鳳誉社長が重大な発表があると申されておりましたが、それは挙式の事だったんですか!?』

とある記者の投げかけた質問に玲奈さんは帝さんをちらり見てから答えた。

『ふふ、それは当日のお楽しみという事でお願いします』

確か、その日は誉さんが社長辞任を発表する日である事を私は知っていた。



ふと、私は気づく。



幸せそうな笑みを浮かべて記者の質問に答える玲奈さんの左手の薬指には婚約指輪が光っていた事を。

しかし、婚約会見なのにも関わらず、帝さんは笑顔のひとつも浮かべていなかった。



ーー久し振りに見た帝さんは少し痩せていた気がする。



いつも自身に満ちたあの余裕の笑みを浮かべていたのに、まるで覇気を感じない。男の人でもマリッジブルーになるんだろうか。

私はこれ以上見ていても胸が苦しくなるだけだと思い、イヤホンを両耳につけて音楽を聴きながら帰宅したのだったーー……。


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