この暴君、恋すると手に負えません
「虹美、靴のサイズは?」
「えっと、23.5センチです」
「分かった、お前は着替えとけ」
そして成り行きで私はスーツに着替えることになった。襟を見ると、とてもじゃないが庶民の私が気軽に着れるようなブランドではなかった。
私は作業着を脱ぎ捨て、下着だけの状態で体にスーツを当てて暫く鏡の前で格闘していた。
すると、何の前触れもなく不意にカーテンが開かれた。
そして暴君とばっちり目が合った私は、反射的にスーツで体を隠した。
「ちょっ、何で開けるんですか!?」
「なんだまだ着替えてねぇじゃないか」
「だって、こんな高いブランド物のスーツなんて着れません!!」
「いいんだよ、それが今日からお前が着る作業着みたいなもんだ」
「いやいや!!こんな高価な作業着なんて着れませんからっ」
暴君は革靴を私に差し出しながら、平然とした顔でこう呟いた。