この暴君、恋すると手に負えません



私は小さな溜息を吐き出し肩を竦めた。すると、扉をノックした後に桐生という男が再び私たちの目の前に現れる。


「帝様、頼まれた物ご用意致しました」
「分かった、ありがとう」

私は二人のやりとりを見ていると、その視線に気づいた暴君が桐生という男を親指で指差した。


「そうか、まだ挨拶してなかったよな?こいつは桐生(きりゅう)だ。朱鳳家に仕える有能な執事だ」


確かに『有能な執事』という名に恥じない理知的な雰囲気を醸し出していた。すると桐生という男は無表情のまま淡々とした口調で自己紹介を始める。

「執事の桐生と申します。美作虹美様の事は誠に勝手ではありますがお調べさせて頂きましたので、貴女のご紹介は結構です」



< 31 / 409 >

この作品をシェア

pagetop