この暴君、恋すると手に負えません


私はこの聖なる夜、帝さんと二人で会う約束をしていた。

いや正しくは、いつものように帝さんが勝手に決めたのだ。私には断る権利もなければ、理由もなかったのだけど。

そして、この日はいつも通りに朝からカフェでバイトをしていたのだ。

私がこの店で働いて三ヶ月以上が経ち、仕事にも慣れていたのだが、ひとつだけ未だに慣れない事がある。

それは、いつも何かと私に絡んでくる男の子がいるのだ。


「あっ、虹美さん!今日は上がりですか?」


--噂をすれば何とやら。
彼がいつも何かと絡んでくる男の子、大学生バイトの南くんだ。

四年生で就活も終わっている彼は、よく同じシフトに入る事が多くて自然と話す機会も多かった。


「……あ、うん。南くん今日17時からなのに早いね?」
「ラテアートの練習も兼ねて、バイト前に一杯飲もうかなって思って」

休憩室でバイト後の一杯を飲んでいた私の隣に、彼は何の躊躇いもなくマグカップを片手に腰掛けた。

他にも座る席はあるのに、何でわざわざ隣に座るのだろうと思いながら無視してカプチーノを飲んでいた。

だが、隣で意味深な笑みを浮かべながら、南くんが何か言いたげに見つめている。

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