この暴君、恋すると手に負えません


まるで機械のような人だ。

いつも無表情で、一切笑みを浮かべない桐生さんは深々と頭を下げていた。


すると突然、携帯電話の着信音が鳴り響いた。どうやら暴君の携帯から鳴っているようだ。


「......アイツか。悪いな虹美、少し待ってろ」
「はい」

そして暴君が部屋の外に出た途端、桐生さんは私を睨みながら口を開いた。

「お前は何が目的だ?」
「え?」
「朱鳳財閥の金銭目的か?それとも帝様の弱みでも握っているのか?」



--この人はさっきから何を言ってるのだろう。



「あの、私は別に何も。桐生さんも見ていたと思いますが、私はただ無理矢理ここに連れられて変な契約をさせられただけです」
「まぁいい。化けの皮が剥がれる前に帝様から離れるんだな。ここはお前のような人間には似つかわしくない」


そんなはっきり言われなくたって、こんなところに今すぐにでも出ていきたいわよ!!


私はむっとした表情で桐生を睨みつけると、桐生さんも冷たい眼差しで私を無言で睨み返す。二人で啀み合っていると、暴君が再び姿を現した。


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