この暴君、恋すると手に負えません
「......ではごゆっくり」
看護師は深々と頭を下げてその場から離れていった。私はどうしても勇気を出せず一歩を踏み出せないでいると、暴君が後ろから背中を軽く押した。
「ここからは一人で行け」
私は黙ったまま首を縦に動かす。それを見た暴君は小さく笑って扉を静かに閉めた。
そしておばあちゃんが眠るベッドに私はゆっくり歩み寄った。ベッドの上に眠るおばあちゃんはいつものように寝ているように見えた。
私は近くにある丸椅子に腰を落とした。病室が夕焼け色に染まる頃、私は冷え切ったおばあちゃんの手をそっと握り締めた。
指先まで硬直した小さな手に目頭が熱くなる。