この暴君、恋すると手に負えません
帝様の自室に向かう足取りはやはり重たく、毎度呼び出されるとつい構えてしまうが、平然を装いながら部屋の扉をノックしたのだった。
「お待たせ致しました、帝様」
「あぁ、桐生。待ってたぞ」
デスクで資料を読んでいた帝様が不意に顔を上げて私に視線を向ける。私は前は向いているものの、視線は合わせる事が出来ずにいた。
「……ご用件は何でしょうか?」
「悪いな。仕事ではなくプライベートの用件なんだが」
--プライベート?また美作虹美絡みの事か?
しかし帝様はそのまま立ち上がって私の元へと歩み寄ると、あの妖艶な瞳で私の目を逸らさないようにじっと見つめた。
やはり、あの瞳で見つめられるとさすがに逸らす事は出来なくなってしまう。